今回は
「物が買われ難くなる話し方」
についてお伝えします。
相手の購買意欲を失くしてしまう
話し方とも言えます。
以前、私は散歩をしている途中で
住宅地に囲まれた場所にある
コンビニに寄りました。
喉が渇いていた為
コンビニでお茶を選び
レジに持って行くと
レジ横にいくつかの商品が並んでいました。
皆さんも見たことが
あると思いますが
ガムやチョコレートが
置いてあったり、苺大福があったり。
「ちょっと追加で買おうかな」と
お客さんに思われそうな物が
置かれている場所です。
そして、私が以前行った時には
年末の時期で、そのレジ横には
干支の置き物が売られていました。
私は
「なかなか可愛くて良いなぁ」
と思いながら見ていました。
そこで、その置き物を買おうかと
思ったのですが
商品に値段が書かれていなかったので
迷いました。
いくら可愛くて良いと思っても
やはり値段で価値を決める部分もあります。
仮に、その干支の置き物が
1円であれば、迷う事なく買います。
しかし、それが10万円するのであれば
絶対に買いません。
ゆえに、値段が重要なのですが
それが書かれていないので
レジの店員さんに聞こうか
どうかも迷いました。
正直に言ってしまえば
わざわざ絶対に買わないと
いけない物でもないのに
値段を聞くほどでもないか・・・
と言う気持ちと
店員さんも忙しそうな所に
聞くのも悪いし
ちょっと面倒臭いから良いか・・・
と言う気持ちで
一瞬、値段を聞くこと自体も迷いました。
でも、こういう物を
買う機会は意外にないし
また良いと思えるものを
一から探して購入するよりも
ここで売られていたのも
良いタイミングだし
値段がそんなに
高くなければ買おうかな
と考え店員さんに
値段を聞くことにしました。
値段を知る前に
その置き物を私が見て
いくらまでなら買っても良いと
思ったかと言うと
1000円位までです。
そこで、レジにいた50代位の
パートの主婦のような店員の方に
その置き物の値段を尋ねました。
すると、その店員の方は
「こちらですね?
これ、800円もしちゃうんです。」
と少し困った顔をしながら答えられました。
私は、1000円位までなら良いと
思っていたので
800円ならば買おうと考えました。
しかし、この店員さんの言い方だと
この置き物はあまり売れないんだろう
と言う事を感じました。
なぜかと言うと、この店員さんの
「800円しちゃう」と言う言葉には
この店員さんが
「これは意外と高い」
と言う気持ちが
込められているからです。
言葉だけでなく困った表情でも
それを見てとれます。
私は1,000円以下なら
買おうと思っていたので
まだ良いですが
これが他のお客さんも同様に
置き物の値段を聞いて
同様の答え方をしたら
それを聞いたお客さんは
「あぁ、これがそんなにするんだ。高いな」
と、店員さんの考え方に
引きずられてしまいます。
その置き物が800円だと言う
事実は変わりません。
しかし、店員さんが
その値段に対して
「高いよね」と言う
雰囲気を出してしまうと
それを受けた相手にも
自分と同じ感覚になるよう
同調させていることになります。
これは、物を売る立場の人は
絶対にやめた方が良いです。
私達、歯科医師は置き物を
売っているわけではありませんが
治療に対する対価を患者さんは支払います。
そして、この値段に対する
価値観が如実に現れるのが自費治療です。
もし、自費治療の説明をしている時に
患者さんに
「この種類の被せ物は10万円もするんですよ。」
と言うような文言で
説明してしまっているなら
それは直ちにやめた方が良いでしょう。
そうやって言う事で
自分も一般的な金銭感覚を
持ち合わせていて
患者さんと同じように
高いと思っていると言う事を
言い表せると考えるので
説明し易いと言う気持ちは
あるかもしれません。
もし、被せ物が10万円と言う事を伝えて
患者さんに
「え?そんなに高いの!?」
と思われるのが嫌だから
事前に予防線を張って
「こんなにするんです。」
と言ってしまうのは
患者さんにとってもマイナスです。
確かに10万円は
高いかもしれませんが
妥当だと感じる人もいれば
安いと感じる人もいます。
その価値基準は
人それぞれですし
経済状況も人それぞれです。
それを、売り手の勝手な感覚で
相手の感情を予測して
その答えを言うのは間違っています。
歯科に限らずですが
物をきちんと売ると言うのは
売り手である自分が高いと思うか
また、それを自分が
相手にとって高いなどと言うことは
全く必要ありません。
売り手の個人的な
価値観は無しにして
商品の事を値段を含め説明をし
それを受けて高いか安いかは
買い手が判断すれば良いだけのことです。
話は戻りますが
このコンビニでの一件に関しても
干支の置き物が1,500円だと言われたら
私は買わなくて良いと思いました。
しかし、自分のベースでは
1,000円以下ならと考えていたので
800円という金額を聞いても
高いとは思いませんでしたし
それが900円でも良いと思いました。
しかし、店員さんの
「800円もしちゃう」と言う言葉で
その商品はそれ程の
価値もないものと言う
捉え方もされかねない状況を
たった一言で作り上げてしまいました。
これが歯科の自費治療ならば
自ら、自分達の治療の価値を
下げてしまっていることになります。
では、そうしてしまわない為に
相手の購買意欲を高める為には
どのように金額を伝えれば良いのか?
このコンビニの店員さんを例にすれば
「800円もしちゃうんです」
ではなく
「こちらの商品は、800円です。」
只、これだけで良いのです。
事実を、ありのまま
感情を介入させずに
きちんと伝えることです。
自分の感情は「高い」と
思っていたとしても
それは一切含ませないことが
非常に重要です。
歯科では、ホワイトニングや
自費の説明で
ちょっと困った感じで
「こんなにするんですよ」
と言う風に説明してしまうと
患者さんも、そこまで高いと
思っていなかったとしても
「結構高いんで、それなら保険治療で良いです」
となってしまいます。
重複しますが、金額を聞いて
どういう判断をするのかは
患者さんが決めることです。
どうしても、患者さんに伝える時に
「絶対に高いと思われるだろう・・」と
金額を言うのを毎度躊躇ってしまうようならば
そもそも自費の定価を
安くすれば良いと思います。
毎回、言うのを躊躇う程の金額設定は
避けた方が良いでしょう。
売り手の話し方一つ
たった一言で
買い手の購買意欲を高めることも
失くしてしまうことも可能です。
自分の治療に
設定している金額だけの価値があると
自信を持っているならば
購買意欲を失くしてしまうような
話し方はやめて
患者さんの判断に任せましょう。
伊勢海 信宏
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